- これから起業を考えている人
- オフィス選びで迷っている人
- 登記の住所に悩んでいる人
『バーチャルオフィス』はなぜ注目されるのか?
最近、レンタオフィスや、コワーキングスペースなど、耳にすることが多くなってきました。
それらは『シェアオフィス』とも呼ばれ、時代の変化によって国内だけでなく世界的にも市場が急成長しています。テレワーク、アウトソーシングをはじめ、働きかた改革による企業の意識変化によって、オフィスのあり方が変わったことが背景にあります。
(出典:「東京都心 5 区におけるフレキシブルオフィス市場の新時代」)
さて、これから起業を考えている人は、オフィスを「自宅」「 賃貸オフィス(レンタル含む)」「バーチャルオフィス」のどれにするか悩んでいるのではないでしょうか。
中小企業庁が公表する「中小企業白書」によれば、起業後の経営者の手取り月収は『約65%が ”40万円以下” 』、そのうちの『約20%が “10万円以下” 』という現状です。
ーーえ? 一般社員の給料以下、もしくは大学生のアルバイト代のほうが高いぐらいでは。。。
そこで、多くの起業家たちがコストを抑えるために『バーチャルオフィス』に注目しはじめました。
『バーチャルオフィス』の最大のメリットとは、賃料1万円でも十分なくらいにコストがかからないこと。しかし、一部の事業では登記できないケースがあるので注意が必要です。
この記事では、これから起業を考えている人のために『バーチャルオフィス』のメリットとデメリットを比較しながら詳しく解説していきます。
『バーチャルオフィス』とは?
『バーチャルオフィス』とは、実際に空間(オフィス)を借りるものではありません。
登記で必要になる「会社の住所」を借りたり、郵便物や電話の転送などの「サービスのみ」を受けるシステムです。(名義貸しではありませんので安心してください)
予約をすれば、会議室や作業スペースを利用できるところもあります。地方に住みながら起業した人が「市街地に出たときだけ」、たまにある「打ち合わせだけ」といった使いかたもポイントです。
IT技術が成長したことで、パソコン1台あればどこでも仕事ができる時代になりました。店舗や、事務所などの空間がなくても成立する事業なら『バーチャルオフィス』がおすすめです。
自分の会社でオフィスを持つのが夢だという人も、『バーチャルオフィス』を聞き慣れない人も、起業後のシュミレーションをしていきましょう。
起業資金は平均500万円
日本政策金融公庫の「2019年度新規開業実態調査」によれば、開業費用が「500万円未満」の割合が40.1%と最も高く、次に「500万~1,000万円未満」が27.8%を占めていることがわかります。
(出典:「2019年度新規開業実態調査」日本政策金融公庫)
多くの人が「500万円」前後で開業していますね。起業すると、次のようなコストがかかります。
- 登記費用
- 家賃(契約時は敷金、保証金、礼金も必要)
- 光熱費(電気代、ガス代など)
- 通信回線費(固定電話、FAX回線、インターネットなど)
- 設備維持費( OA機器のリース、メンテナンス費用など)
- 人件費
- その他(消耗品、雑費など)
登記費用
起業するには届出が必要です。これを「登記」といい、株式会社の場合は 約25万 ほど費用がかかります。
家賃
そして、個人で起業する場合は、会社の場所を登録する必要があります。レンタルオフィスを5名ほどで借りた場合、「前払い家賃」「敷金・礼金」「仲介手数料」など合わせて 約100万ほど。
光熱費
会社を運営するために必要な、「エアコン」「パソコン・周辺機器」「電話」「机・イス」「書類棚」などの設備や事務用品や、「印鑑」「名刺」「封筒・紙袋・文房具」「ユニフォーム」などの小物や消耗品を合わせて 約200~300万円。
宣伝費
「企業ロゴ」「ホームページ」「PR」「案内状」などの宣伝費が必要なら 約50万円 が加わってきますし、仕入れが必要な業態なら「商品仕入れ」「外注」「材料」「加工」などの製造費も必要です。
人件費
人件費については、「給与」「賞与」のほかに「保険・年金」「福利厚生費」「通勤交通費」があることも忘れていはいけません。
法人の場合は、「法人事業税」「消費税」「源泉徴収額」「固定資産税」などの税金を納める必要があります。
500万円なんてあっという間に消えてしまいますね、、、。人件費は仕方ないとしても、家賃と設備費が高くつく。
「経費削減は固定費から」といわれますが、オフィスの移動は頻繁にできなので、慎重になりますよね? 起業時は『バーチャルオフィス』で、事業が軌道に乗ってから賃貸オフィスを借りる人が増えています。
『バーチャルオフィス』で賃料1万円からスタート!
(引用:Karigo)
近年、起業家に注目されている『バーチャルオフィス』は、安く住所を借りられる特徴があります。
全国展開で『バーチャルオフィス』を提供しているKarigoでは、東京の銀座でも月額基本料金が 5500円となっています。ただし、電話転送や代行、荷物の引取りなどのオプションは別料金が追加でかかります。
一方で、自宅を会社の住所にすればコストダウンできるのではないかと思いがちですが、リスクやデメリットがあるので注意が必要です。
では、『バーチャルオフィス』のメリットとデメリットを比較して、もう少し深く検討していきましょう。
『バーチャルオフィス』の3つのメリット
登記するときの会社の住所を、レンタルオフィスや自宅ではなく、『バーチャルオフィス』にした場合は、大きく3つのメリットがあります。
メリット
- 「起業費用」を大幅ダウン
- 「企業ブランディング」に有利
- 「個人情報」の安全性
メリット①:「起業費用」を大幅ダウン
自宅やカフェなど、作業する場所を選ばない仕事なら『バーチャルオフィス』がおすすめです。オフィス運営に必要な経費を大幅にコストダウンできます。
都内のレンタルオフィスの相場は、約6万円前後から。毎月のランニングコストを5万円削減できた場合、3年間で180万円(5万円×36ヶ月)のコストダウンになります。
ムダな経費はおさえれば、新しいビジネスチャンスを掴む資金にかえることができます。
メリット②:「企業ブランディング」に有利
会社を運営するうえで、信用や信頼性はとても重要です。
想像がつくと思いますが、起業してすぐは「顧客」「銀行」「公的機関」などからの信用は低いです。お金まわりがうまくいかないと、経営は継続できません。
短期間で信頼性を高めるには、企業イメージを戦略的にブランディングするのが効果的。
都心の一等地に住んでいる人にたいして、「たくさん稼いでいるんだろうなあ」とイメージしませんか? これは、会社にもとっても同じ。
会社の登記、ホームページ、名刺など、相手にとって第一印象にもなる会社の住所は、顧客や取引先の信用を得るには重要な役割をもちます。
これから起業を考えている人は、セールスや販売力に直結するといわれる「権威への服従原理」という心理効果を聞いたことあるのではないでしょうか。
広告でいうと、「業界 No.1」「〇〇賞 授賞」「有名モデル〇〇も愛用」などのキャッチコピーです。実物の商品を目にしてないのに、ネットショップで購入した経験があると思います。
会社の住所にもいえることで、都心の一等地や、駅チカなど、ビジネスで優位な土地に住所があるかないかで、信頼性も変わってくるものです。
メリット③:「 個人情報」の安全性
起業するなら、会社の住所は自宅以外に持つことをおすすめします。
- 自宅の住所を事業利用できない可能性がある
- 郵便受けに社名を記載する事ができない
- 自宅に営業マンが訪ねてくるようになる
賃貸マンションの場合、そもそも事業用としての利用を認められない(大家さんによる)ことがあります。となると、もちろん郵便受けに社名を記載することはできません。
自宅を会社住所にすれば、コストダウンには非常に効果的でしょう。しかし、インターネットで登記情報は閲覧できるので、名前や自宅が公開されることを忘れてはいけません。
女性起業家や、家族のある人が『バーチャルオフィス』を利用している代表的な理由の一つでもあります。自宅を登記住所にして、トラブルに巻きこまれたケースは少なくないので、くれぐれもご注意ください、
『バーチャルオフィス』の3つのデメリット
つづいて、登記するときの会社の住所を『バーチャルオフィス』にした場合のデメリットを解説していきます。大きくわけると3つあります。
デメリット
- 「郵便」の受け取り期間
- 「住所」が重複する
- 「人材派遣業」は許可がおりない
デメリット①:「郵便」の受け取り期間
開業すると、会社にはさまざまな郵便物が届くようになります。
『バーチャルオフィス』を利用した場合、①バーチャルオフィス → ②自宅 or 指定の場所 という順に転送されるので、受け取りまで1週間前後時間がかかることも。
重要な書類や、スピーディーな対応が必要な場合は困ってしまいますね。
とはいえ、書類のデジタル化が当たりまえになってきている時代です。顧客とのやり取りがデータであれば、さほど気にしなくてもよいかもしれません。
デメリット②:「住所」が重複する
実際のスペースがないことを逆手にとって、『バーチャルオフィス』は詐欺に利用されることもあります。
そうなると、「社会的に信頼できない会社と、同じ空間で事業を営んでいる」と印象をもたれてしまうかもしれません。この点では、レンタルオフィス、コワーキングスペースを借りる場合もおなじです。
一つのビルに、階が違って会社がいくつも入っていることは珍しくはありません。
しかし、複数の会社がおなじ住所で登記されている『バーチャルオフィス』の場合、インターネットで住所検索すると他の社名が上位ヒットすることもあります。
他社と住所の重複を避けたいのであれば、賃貸オフィスを借りるほかありません。インターネットの検索結果が気になる人は、事前に自分で調べてみることをおすすめします。
デメリット③:「人材派遣業」は許可がおりない
事業を始めるためには、官公庁への許認可(届出・登録・認可・許可・免許)が必要です。
業種によって、許認可はそれぞれです。
許認可の条件に、執務スペース、電話、FAXなどの設備が必要であれば『バーチャルオフィス』では申請できません。
例をあげると、人材派遣業、有料職業紹介の場合は認可がおりないケースが多いようです。
事業内容が『バーチャルオフィス』で認可されるものかどうか、事前に確認しておかないと拠点探しから再度スタートすることもあります。
以下の事業は、認可がおりる一例です。
インターネットショップ(通信販売業)
食品をあつかう場合は飲食店営業、リサイクルショップであれば古物営業など、商品によって許可が必要になる場合があります。
学習塾、家庭教師派遣業
一般労働者派遣事業、有料職業紹介事業の場合は許可が必要です。
ベビーシッター
厚生労働省所管の社団法人全国ベビーシッター協会に登録することが望ましいとされています。
駐車場経営
500㎡以上の場合には届出が必要になります。
『バーチャルオフィス』のウソとホント!?
ーーバーチャルオフィスだと、社会保険の申請ができないって聞いたことあるけど本当?
インターネット上に溢れている情報によっては、「どれが本当なの?」と混乱することもありますよね?
ここでは、『バーチャルオフィス』のよくある問い合わせを3つ紹介します。
「社会保険」の申請ができないってホント!?
『バーチャルオフィス』を登記住所にしても社会保険の申請はできます。
厚生労働省のホームページにもあるとおり、法人でも個人でも関係なく「従業員が1名でもいる」と、社会保険の加入が義務付けられています。雇用保険の加入も同様です。
もう少し詳しくいうと、社会保険を申請する際は、資金台帳などの書類をしっかり確保できる状態なのかを確認さますが、保管場所を自宅で申請してもかまいません。
「法人銀行口座」の開設ができないってホント!?
『バーチャルオフィス』で登記をしていると、法人としての口座開設はかなり困難です。
というのも、詐欺事件で摘発された会社の多くが『バーチャルオフィス』を利用していたため、警視庁が法人口座を開設しないように通達を出さざるをえなくなったためです。
しかし、これまでの人生を、まじめに生きてきた人なら法人口座は開設できるでしょう。
審査は、代表者の住所・連絡先・家族構成や、預金、経歴、犯罪歴、事業内容、取引先など、多くの点から検討されます。
かならず開設できるとは断言できませんが、過去・現在・未来にやましいことがなければ、審査が通るケースが多いといわれています。
事業内容によっては、「都市銀行」「ゆうちょ銀行」「地方銀行」「ネット銀行」など、それぞれで通ることも通らないこともあるので、しっかりと事前の調査はおこなってください。
「融資」がむずかしいってホント!?
ほぼ本当です。『バーチャルオフィス』で登記した場合、創業融資を受けられないことのほうが多いです。
なぜなら、事業実態が見えないから。美容室、飲食店、雑貨店のように、店舗を構えた事業と比較すると、どうやっても審査が厳しくなってしまいます。
融資を前提に起業する予定であれば、『バーチャルオフィス』はおすすめできません。
まとめ
じつは、レンタルオフィスであれば、『バーチャルオフィス』のデメリットは全てクリアできます。
ですが、今回紹介した「スペースを必要としない」「融資がなくてもはじめられる」ような事業であれば、不要なコストは抑えて「人材の確保」や「品質向上」に投資したほうが利益につながります。
キレイでオシャレなオフィスを持つことに夢見がちですが、優先すべきは会社の経営を持続させること。誰もが知っている『Amazon』ですら、創業当初はちいさなオフィスからはじまっていますしね。
くらしと仕事をワンランク上に。
以上、YAKUMO(@yakumostyle)でしたー
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